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8-23 亀裂の原因は? 1

last update 최신 업데이트: 2025-04-19 19:17:55

 エレベーターのドアが閉まった後も朱莉の心臓はドキドキと早鐘を打っていた。

(い、今の女性は姫宮さん……。何故一人でここに……? やっぱり二人はもう……?)

思わず目じりに涙が浮かびそうになり、朱莉はゴシゴシと目を擦った。姫宮のことは気がかりだが、今は安西に呼ばれている。彼の話を聞きに行くのが先だ。

朱莉は再び帽子を目深にかぶり、コートの襟を立てる。傘をさして、駅へ向かって歩き始めた――

****

 結局、朱莉はカフェには寄らずに真っすぐ安西の事務所へやって来た。姫宮を億ションで見かけてしまったショックで食欲など皆無だったからだ。傘を閉じて狭い階段を登り、インターホンを鳴らした。するとすぐにドアが開き、安西が顔を覗かせた。

「朱莉さん。雨の中お呼び立てしまい、申し訳ございません」

事務所の中へ入ると安西が謝罪してきた。

「いえ、とんでもありません。むしろ雨の中、働いていらっしゃる調査員の方達に申し訳ないくらいです」

「ハハハ……それは別に気になさらないで下さい。それが我々の仕事なのですから。さ、どうぞソファにおかけください」

安西は朱莉にソファを進めてきた。朱莉は腰かけると安西に尋ねた。

「それで新しく掴んだ情報と言うのは何でしょうか?」

「ところで朱莉さん。コーヒーはいかがですか? 実はいい豆が手に入ったんですよ。よろしければ一杯どうですか?」

「本当ですか? 嬉しいです。実は丁度コーヒーが飲みたいと思っていたので」

「では少しお待ちくださいね」

安西はコーヒーミルを持ってくると、そこに豆を入れて、ゆっくりと挽き始める。

「すごい……本格的なんですね」

朱莉は感心して、その様子を見つめる。

「ハハハ……実は大学を辞めた時、興信所かカフェを経営するか迷ったんですよ」

「それは……またすごいですね……」

(全く共通点の無い職業のどちらかを選択しようとしていたなんて。才能がある人なんだ……)

朱莉は感心してしまった。

「さあ、どうぞ」

朱莉は早速挽きたてのコーヒーを口に入れる。

「おいしいです……。それにあまり苦みが無いですね」

朱莉の言葉に安西は笑みを浮かべた。

「おや? 朱莉さんはコーヒーの味が分かるのですか? 実はこの豆は粗挽きなんですよ。粗く豆を挽くと苦みが抑えられて軽い味わいになるんですよ」

「そうなんですか? でも、本当に美味しいです」

朱莉はゆっくりコー
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    11時半—— 朱莉と航は那覇空港へと戻って来ていた。朱莉は先ほどの『瀬長島ウミカジテラス』が余程気に入ったのか、航に感想を述べている。「本当にびっくりしちゃったよ。まさかあんな素敵なリゾート感たっぷりの場所があるなんて。まるで何処かの外国みたいに感じちゃった」「そうか、そんなに朱莉はあの場所が気に入ったのか。それならまた行ってみたらいいじゃないか」航の言葉で、途端に朱莉の顔が曇った。「うん……そうなんだけど……。でも、私1人では楽しくないよ。航君と一緒だったからあんなにも素敵な場所に見えたんだよ」「朱莉……」朱莉の言葉に、もう航は感情をこれ以上押さえておくことが出来なかった。(もう駄目だ……!)気付けば、航は朱莉の腕を掴み、自分の方へ引き寄せると強く朱莉を抱きしめていた。(朱莉……! 俺は……お前が好きだ……離れたくない!)航は朱莉の髪に自分の顔を埋め、より一層朱莉を強く抱きしめた。「わ、航君!?」位置方、驚いたのは朱莉の方だった。航に腕を掴まれたと思った途端、気付けば航に抱きしめられていたからだ。慌てて離れようとした瞬間、航の身体が震えていることに気が付いた。(航君……もしかして泣いてるの……?)——その時。「何をしているんですか?」背後で冷たい声が聞こえた。航は慌てて朱莉を引き剥がすと振り向いた。するとそこに立っていたのは——「京極……」京極は冷たい視線で航を見ている。「安西君。君は今朱莉さんに何をしていたんだい?」「……」(まさか……こいつが空港に来ていたなんて……!)航はぐっと拳を握った。その時、朱莉が声を上げた。「わ、別れを! 別れを……2人で惜しんでいたんです……。そうだよね、航君?」朱莉は航を振り返った。「あ、ああ……。そうだ」「別れ……? でも僕の目には航君が一方的に朱莉さんを抱きしめているようにも見えましたけど?」「そ、それは……」思わず言葉が詰まる航に朱莉が素早く反応する。「そんなことありません!」「朱莉……?」「朱莉さん……」朱莉の様子を2人の男が驚いた様に見た。丁度その時、航の乗る飛行機の搭乗案内のアナウンスが流れた。「あ……」航はそのアナウンスを聞いて、悲し気に言った。「朱莉。俺、もう行かないと……」「う、うん……」すると京極が笑みを浮かべる。「大丈夫ですよ、

  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   10-17 航との別れ 1

    「朱莉、おはよう!」航は笑顔で元気よく朱莉に朝の挨拶をした。8時に起きた航がキッチンに行くと、そこにはもう朱莉が朝食の用意をして待っていたのだ。「おはよう、航君」朱莉も笑顔で挨拶する。「朱莉、今朝の朝飯は和食か?」航がテーブルに座ると尋ねた「うん。そうだよ」朱莉は、ご飯に味噌汁、焼き鮭、青菜の煮びたし、だし巻き卵をテーブルに並べた。「へえ~どれもうまそうだな」「ありがとう、それじゃ食べよう?」そして2人でいつもと同じように向かい合わせで食事を始めた。「うん、やっぱり朱莉の作った飯はうまいな」航は笑顔で言いつつも、心の中は暗く沈んでいた。(もう……こうやって朱莉の手作り料理を食べることも無くなるんだな……)すると、そんな航の気持ちを汲み取ったのか朱莉が言った。「あ、あのね……航君さえ良かったら、東京に戻っても時々は私の住む部屋に遊びにきてくれれば、食事位用意するけど……?」「朱莉……」航はその言葉を聞けて、自分でも驚く位感動してしまった。だが……。「朱莉……。気持ちは嬉しいけど……多分それは無理だろう……?」「え? どうして?」朱莉は顔を上げた。「どうしてって……。だって次に朱莉が東京に戻れば赤ん坊との生活が始まるわけだろう? そんな子育てで忙しい時に……俺が訪ねるわけにはいかないだろう……?」航は茶碗と箸を持ちながらポツリと呟いた。「あ……」朱莉もそのことを指摘されて気付いた。(そうだ……私は明日香さんの赤ちゃんをこれから24時間見守っていかないといけない。しかも自分の赤ちゃんじゃないから翔先輩と明日香さんの大切な赤ちゃんを預かる訳だから、より一層神経を使って育てて行かなくちゃならないんだ……)「そ、そうだったね。確かに航君の言う通り難しいかも……」すっかり元気を無くしてしまった朱莉を見て、航は慌てた。「あ、で、でも朱莉! 子育てが落ち着いて……そして5年後、鳴海翔との離婚が成立すれば、その時は俺が……!」言いかけて、航は口を閉ざした。俺が……? その後自分は何を言おうとしたのだろう? 一瞬昨夜言われた京極との話を忘れかけていた。(そうだ……俺はもう朱莉のことを……諦めなくちゃいけないんだ……)思わず目頭が熱くなりかけ、航は目を腕でゴシゴシと擦った。「航君? どうしたの?」朱莉が不思議そうに首を傾げ

  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   10-16 京極と航 2

    「……うまい言い訳だな」腕組みをしてこちらを睨み付けている航を見て京極は溜息をついた。「どうも君はさっきから僕のことを何か勘違いしているように見えるから、この際はっきり言わせてもらう。いいか? 僕は敵じゃ無い」「敵? 何のことだか」すると京極の態度が変わった。顔つきが険しくなり、声のトーンが低くなった。「いいか? 敵を見誤るな。本当の敵は誰なのか、よく考えてみろ。君が余計な動きをすると今迄立ててきた計画に支障をきたすんだ」「な、何だよ……その計画って言うのは……」航が尋ねると京極が言った。「いいだろう。別に教えてやってもな。その代わり約束して貰う。この話を聞いた後はもう僕のことを嗅ぎまわるのはやめてもらうからな?」そして京極は静かに語り始め……航の顔色が青ざめていった――****「航君、遅いな……」朱莉はリビングで航が帰って来るのを待っていた。壁にかけてある時計を見ると時刻は既に夜中の0時を過ぎている。「戸締りをして先に休んでいるように言われてたけど心配だな……」——ガチャリ丁度その時、玄関のドアが開く男が聞こえた。(航君が帰って来たんだ!)「お帰りなさい、航くん!」朱莉は笑顔で玄関まで迎えに行った。「ええ? まだ起きていたのか?」航はびっくりした様子で朱莉を見つめる。「それで京極さんとの話し合いはどうなったの?」「うん、気になって眠れなくて……それで京極さんとの話はどうなったの?」「ああ、それなら問題ない。大丈夫、解決したんだ。朱莉は何の心配もする必要は無いからな?」航は笑顔で答える。「え? 航君……それは一体どういう意味なの……?」(何だろう? 何だか釈然としない。マンションを出た時の航君と、今の航君は何故か別人のように感じる……)「だから、朱莉。そんなに心配そうな顔するなって。京極はもう朱莉に余計なことは何一つ尋ねないって約束してくれたんだよ。それってつまり朱莉が10月に明日香の産んだ子供を連れて億ションに戻ったとしても京極は何も聞かないってことだとは思わないか? 朱莉が答えられない質問は一切しないと京極が約束したんだ。だから俺もその代わりに京極のことを調べるのはやめると互いに取り決めを交わしたのさ」「航君……?」朱莉は耳を疑った。本当は航は京極に何か脅迫されて、今の台詞を言わされているのではないだろ

  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   10-15 京極と航 1

     航が待ち合わせ場所に着いた時には既に京極の姿がそこにあった。「やあ、安西君。待っていたよ」京極は笑顔で航に笑顔で挨拶をしてきた。「京極……」航は苦々し気に京極の名を呟いたが、京極の耳には届いていた。「また君はそんな口の利き方を……いいかい、僕は君よりも5歳年上なんだよ? もう少し部をわきまえるべきだと思うけどね?」「ああ、普通はそうだろうがな……。だが、あんたは朱莉の敵だ。敵に対して部をわきまえるつもりは俺には無い」「……」京極は黙って航を見つめていたが、やがて言った。「やめておこう。こんな人通りが多い場所で立ち話をするような話の内容でもないし。そうだな、ビーチにでも行ってみるかい?」「あいにく夜に男とビーチに行くような趣味は俺には無いんだよ。朱莉とだったら一緒に行ってもいいけどな?」ニヤリと口角をあげる航。「朱莉……」京極の眉がピクリと動いた。航はわざと京極を挑発するような言い方をしたのだ。「いいだろう、それじゃ航君は話し合いの場は何所なら構わないって言うんだい?」京極は肩をすくめた。「お前となら、その辺のファミレスで十分だ」何所までも喧嘩腰な口調の航。「ファミレスか……。うん、丁度あそこにあるね。よし、行こう」京極が先に立って歩き出したので、航は後に続いた。 2人でファミレスの席に向かい合わせで座り、お互いコーヒーを注文した。そして程なくしてそれぞれの前にコーヒーが運ばれてくると、早速京極が口を開いた。「さて、本題に入らせて貰おうか? 航君、忠告しておく。僕のことを調べるのはやめるんだ。君のような人物に周辺をチョロチョロされるのは、はっきり言って迷惑なんだ。さもなくば……」「さもなくば……どうするんだ? 俺を脅迫するネタでもあるのか?」「別にそういうことはないけどね。ただ、周りを嗅ぎまわられるのは、いい気分はしない。君だって、自分がその立場だったらそう思うだろう?」「自分のことを調べるのはやめろって、つまりお前に何かやましいことがあるからだろう? 第一そっちこそ俺のことを調べているんじゃないのか? そうでもなければ、わざわざうちみたいな小さい興信所に企業調査の依頼なんかしてくるはずがない」「……」京極は黙って航の話を聞いている。「お前は俺が朱莉の側にいるのが邪魔で仕方が無いんだろう? だから朱莉から俺を

  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   10-14 京極からの呼び出し 2

    「え!? まさか『リベラルテクノロジーコーポレーション』って京極さんの会社の!?」「そうだ……。きっとこれは京極の差し金に違いない! 恐らくアイツは俺が自分のことを調べようと思っているのに感づいたのかもしれない。俺と言う邪魔な存在を排除するために東京へ戻すように企てたんだ……!」「航君……」「朱莉、すまない!」航はソファから降りると朱莉に突然土下座をしてきた。「ま、待って。航君、そんな真似しないで。だって航君は何も悪いことしていないじゃない」朱莉は慌てて航の側へ行くと肩に手を置いた。航は朱莉の顔を見つめた。「いや、やはり俺のせいなんだ。俺が……京極の前で興信所の調査員だと身元を明かしたからあいつは俺のことを調べたんだ。絶対そうに決まっている」「航君……」その時、朱莉のスマホが鳴った。朱莉はテーブルの上に置いてたままのスマホに手を伸ばしたが……着信相手を見て固まってしまった。相手は京極だったのだ。「朱莉、俺にそのスマホ貸せ!」朱莉が頷くと、航は自ら朱莉のスマホをタップした。「もしもし……」なるべく怒気を押さえて話すが、京極に対する怒りがどうしても抑えられない。『ああ……安西君でしたか。こんばんは』妙に落ち着いた声が受話器越しから聞こえてきた。「京極さん……俺が朱莉の電話に出たのに随分落ち着いていらっしゃいますね?」『そうかな? もし、そう感じられるのであれば安西君、君に何か心当たりがあるからでは無いですか?』「何!?」「わ、航君……」朱莉が航の剣幕に困惑している。「京極さん、俺は明日東京へ帰らなくてはならなくなりましたよ」『そうですか。それはまた急ですね。飛行機のチケットは取れそうですか?』「いいえ、あまりにも突然の話だったのでこれから手配しなくてはならなくて大変ですよ。もしかすると飛行機の席をとれないかもしれませんね」お互い、冷静な口調で話してはいるが、そこにはまるで火花が飛散っているように朱莉には感じた。『それなら大丈夫。僕が羽田行のチケットを押さえてあるから』京極の言葉に航は衝撃を受けた。「何だって……!?」航は初めて、そこで怒りを露わにした。『それで航君、君に飛行機のチケットを渡したいのでこれから会えませんかね?』「それは丁度良かった。俺もあんたに会いたいと思っていたんでね」もう航は京極に対して

  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   10-13 京極からの呼び出し 1

     その日の夜―― 食事も風呂も終えた航は明日から京極のことを調べる為の下準備をしていた所、突如スマホが鳴った。その相手は父からだった。「げっ! と……父さんからだ……」航は髪をクシャリと書き上げ、露骨に嫌そうな顔をした。「え? 安西先生から?」食器洗いをしていた朱莉が振り向いた。「ああ。今迄はメールばかりだったのに何だってこんな急に電話なんか掛けてきて。何だか嫌な予感がするな……」「でも出た方がいいよ? 急用かもしれないし」「そうだな……。仕方ない……」航が頷くのを見届けると朱莉は再び食器洗いを始めた。航はスマホをタップすると電話に出た。「もしもし……」『航か。今までの報告書は全て目を通した。ご苦労だったな』「ああ、別にこれ位は大したことじゃない。後、残りの証拠は……」『その件ならもういいんだ。依頼主も納得してくれたから、航。お前明日東京に帰って来い』父親の突然の話に航は驚いた。「はあ!? 何だよ! 急にそんなこと言われても、まだこっちでやることが残ってるんだよ!」『いや、もうこれで今回の仕事は終わりだ』「何だよ、それ……。折角沖縄まで来て、ことが片付いたらすぐに戻れなんて……」その言葉が朱莉の耳にも届いた。(え? 航君……ひょっとして東京に戻っちゃうの?)朱莉は動揺した。リビングではまだ航と父との会話が続いている。『まあ本来なら2日位は休みを与えてやりたいところだが、至急の依頼が入ったんだよ。どうしても手が足りないから航、お前に戻って来て欲しいんだ。お前に調査をして貰わなければならなくなったんだよ』「一体、今度はどんな調査なんだよ。どうせ浮気調査なんだろう? だったら……」『いや、今回は浮気調査じゃない』「へえ……珍しいな。それじゃ何の調査なんだ?」『企業調査だ。ある企業からの依頼で今度新規に取引をする企業があるらしいのだが、そこが信用に値するかどうか調べて欲しいらしい。業績や経営状態、営業内容の把握……それらを調べて貰いたいそうだ」「ふ~ん……。成程……っておい! 俺はまだ引き受けるとは……!」『依頼相手はIT業界で注目を浴びている企業なんだ。『リベラルテクノロジーコーポレーション』という会社だ。航、お前この企業知ってるか?」「な、なんだって!? 『リベラルテクノロジーコーポレーション』だって!?」航は

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